ザ☆シュビドゥヴァーズの日記

毎日更新されたりされなかったりする日記

ani×sing収録に行って録音してきた話2

KJです。

あにしんの音源編集が忙しくてあにしんのブログが書き終わらないです。 アイマスするのに忙しくてアイマスが出来ないって言ってるプロデューサーの気持ちが3ミリくらいわかりました。

前回

ani×sing収録に行って録音してきた話1 - ザ☆シュビドゥヴァーズの日記

の続きです。

あらすじ:あにしんに録音しに行ったものの時間足りなくて絶体絶命

怒涛のディレクション、駆け抜ける中間セクション

半ば絶望感の中、収録チームに話を振りました。

やばい。状況が悪すぎる。あと1セク何分だこれ。

本当ならば、ここで「終わらない可能性」について検討すべきです。

が、その可能性は無視しました。

もうとっくに賭けには出てしまっている。無茶なペースだろうとやるしかない。

残り6セクション。さらにソロや台詞の収録まである中、残り時間は片付けまで全部入れても3時間半。

もう1セクション毎に休んでいる余裕はありません。

2セクションをセットにして、さらに短い部分は可能な限り圧縮して回して行く事にします。

その場で計算して出した時間猶予は、2セクションセットでそれぞれ45分程でした。

ディレクターとアシスタント、私より遥かにコミュニケーションの達者な2人が全体に説明を始めます。

残り時間がかなり厳しい状態であること。

セクションごとの目標時間を設定して、多少納得が行かなくても時間になったら切ること。

そして最後に付け加えます。

「大丈夫大丈夫!1発OKならたった1分で終わるから!余裕!」

収録進行の全権を任せてもらっている以上、タイムキープにおいても最終的な責任は私にあります。

この状況で完全に余裕がなくなっていた私は、2人が居なければ的確に指示を出すこともままならなかったでしょう。

1発OKがそうそう出ない事は誰もが分かっていますが、可能性が有ると無いとではモチベーションが大きく変わってきます。

ここで変化が始まったのは収録サイドだけではありません。

時間の明確な上限設定が出来たことで、あにしんのメンバーの動きが変わり始めました。

歌う時間だけではなく、音源をチェックする時間。録りなおすかどうかを判断する時間。

この全てに、今まで無かった「時間が勿体無い」という意識が乗って来て、確実に行動に現れて来ました。

始めにミスったのに誤魔化して最後まで演奏を続け、結局ボツになる、という様な大きな無駄を避ける為に、歌い手が自分から積極的にミスを申告し、演奏を中断して修正する。収録側からだけでなくパートから全体に、またパートから別のパートへのアドバイスが飛ぶ。

そういった、全員が目的の為に同じ方向を向いて連携して行くチームプレーが動く様になって来ていました。

「次のセクション行きます!理想値20分、上限値30分です!」    

多少の時間オーバーを出しながら、なんとか中盤まで進む頃。 この頃には収録サイド内も互いに役割と連携が出来てきます。パート毎のリズムや発声、表現。出だしや音程ブレ等を判断し、続けても割に合わない場合全体にストップをかける判断。連続してNGが入る様な時にはもう一方がフォローを入れます。

「テナーを!いじめてる訳では!ないんです!」(超録り直してごめんなさい)

段階が進むとペースが上がり、完走への希望は真っ暗ではなくなって来ました。それでもまだ時間が足りません。更に加速する前提でないとたどり着けない状態です。

なにより、事前の準備段階での見立てでは、18時を待たずして歌い手の体力が消耗し、パフォーマンスが低下してくるはずでした。

しかし、我々収録班は最後にani×singの底力を見せつけられる事になります。

・土壇場の底力、最終セクション

全体収録、最終セクション最終テイクは鮮明に記憶に焼き付いています。

このラストテイクから撤収までは、間違いなく2019年で最も長い30分でした。

最終セクション最後の数小節がなかなか決まらない。途中うまく行っても、どこかで不満点が残る。1テイクはそこそこのものが録れた。しかし、もう1テイクでどうしても全体が決まらない。

この時点で、本来の予定ではもう台詞、そしてソロ収録に入っていなければなりません。時間はすでに予定時刻を超過しています。

「これ以上録ったところでもっといいのは録れるのか?それともここで諦める?」

参加メンバーに迷いが見えます。

収録サイドにも確たる答えはありません。

迷って時間を消費しても、結局結果を出せないまま終わる事になります。

もう後は全員の気合に頼るしかない。そう決めて、全員に言いました。

「これがラストです。」

「これでうまく行かなければ、諦めます。半端になりますが、さっきのテイクを使います」

「今日の収録、最後の1テイクです。頑張ってください」

リテイクはない。もうミスっても途中で止める事は出来ない。こんな所で祈るような気持ちを味わう事になるとは……。この日100回近く押したであろう録音ボタンを押します。

序盤、中盤。

ここまでは今までも何回か通っている。大丈夫。問題はラスト。

最後の和音が鳴った瞬間、アシスタントと顔を見合わせました。

その日幾度となく行われた(いやー、今のはダメだよね。ストップしよう)の確認ではなく、真に(これは…!)という感動の意思疎通。

本当に決まった。

土壇場で最高のパフォーマンスを発揮したあにしんの底力。

体力的にも相当な消耗が想像され、とっくに底をついていてもおかしくない中、最後の最後で発揮された最高の集中力。

最大限に張った緊張と最高の恍惚がない混ぜになった感覚に心底やられ(多分脳内麻薬)、私はこの瞬間から数日間、この不思議な感覚から解放される事はありませんでした。

アシスタント「1週間は心が関西にとらわれていた」

絶対的に上手い演奏なんていくらでもある。

それでも、参加者の演奏が洗練されて行き、最高の音に変化した瞬間を観測出来て、(この瞬間の為だけにまた来たい) そう思ったのは本当に忘れられません。

しかし夢心地も束の間、歌本体が終わってもまだ収録は終わりません。完走に向けて時間との闘いは更に厳しくなっていきます。ここからは一部のメンバーしか知らないソロ収録の録音サイド。そして撤収。

続きます。次で最後。