ザ☆シュビドゥヴァーズの日記

毎日更新されたりされなかったりする日記

お願いマッスル編集の話

KJです。

手を付けていなかった新しいピッチ補正ツールを動かしておもしろいおもしろいとか言ってたら今日ブログ担当だったのを忘れてました。

お願いマッスル録音の話 - ザ☆シュビドゥヴァーズの日記

の続き、編集篇です。これ書いとかないともうこの音源の次の次の動画がアップされてしまう。僕は何に追われているんだ。

○終わらないマスタリング

・情報量が多い

今回の音源編集の最大の敵は、情報量の多さでした。

まあ普段からシュビ音源とか扱ってると合唱とは思えない程の要素を扱う事にはなるんですが、それと比較しても多い。音が多いセクションだと大量のマッチョ(最大24名)とラップ、全員分のコーラス、ピアノが同時に鳴ります。ダブカル構成の合唱アンサンブルとは思えない音の数です。

その上、多少優先順位はあるものの、どのパートもそれなりにちゃんと聴こえる事が要求されます。

録った音源に関しては参加メンバーにチェックしてもらう事が多いのですが、音源チェック中のメンバーからは「情報が多すぎて気持ち悪くなって来たので休みます」と連絡が来ました。

こんな音源を酔うほど真面目に聴かなくていい。

今回のマスタリングの悩みどころは、全てこの要素の多さです。これには後の編集でも散々苦しめられる事になります。

・マッチョとテナーがうるさい

レコーディング時点のこの音源は「曲のラストの盛り上がりに同期して増えていくマッチョの掛け声」が非常に大きいエネルギーを持っていました。

曲の旋律自体も盛り上がりを見せるために、「盛り上がりを聴かせたい部分」がひしめき合っており、“あちらを立てればこちらが立たず”を地で行くような調整です。

全体を一定の幅内に収めないといけないのにマッチョが圧迫してくる感じ。

最終的にはどうにか筋肉成分を押し込めて抑え込んだんですが、かなりギリギリの調整を繰り返しました。

可能な限り解説を試みるとすれば、イメージは7割位マッチョが乗ってる満員電車です。通勤ラッシュの駅で上り電車のドア閉める、あの駅員さんの押す相手が全部マッチョだったと仮定してください。筋肉って脂肪に比べて硬いじゃないですか。押し込むのにも労力がかかります。大体そんな感じです。わかりますか。わかりませんか。

・マキシマイザとの相性が悪い

これはこの音源特有の問題なのですが、音圧を上げていくと端々に微小なノイズが乗る問題が発生していました。

音圧を上げるのにはマキシマイザというエフェクタを使います。このパラメータを上げて音圧を上げていくのですが、上げすぎると今度は音が歪んだり割れてしまいます。この限界領域での挙動はそれぞれのマキシマイザの特性によって違ってきます。

私が普段使っているマキシマイザは、音圧を引き上げて行くと割れが発生してくるタイプのものです。そしてこれが今回の音源と相性が悪かった様です。ほとんどの部分で問題が無いのに、特定の所でどんなに対処しても「プツッ」とノイズ(割れ)が入ってしまうのです。

一番基本的な対処方法は曲全体の音エネルギーを下げていく操作ですが、この一部分のために全体へ影響を与える事はあまりしたくはありません。

これはマスタリング上のポリシーにもよりますが、私は基本的にポップスの音源と並んで再生されてもそのまま快適に聴ける事を一つの目標にマスタリングをしています。演奏の深みを聞かせるタイプの曲ならまだしも、こういう押し付けがましい圧力を主張する演奏で音圧が足りないのは致命的です。なんの為の筋肉だよ。

いろいろセッティングを変えたり、敢えて音を割れさせたままデクリッカー(音割れ系のノイズ専用の除去エフェクタ)を使って力技でパラメータを上げたり、数日かけて試行錯誤を繰り返し、最終的にキレて全く別の普段使っていないマキシマイザーに全投げした所、5分で全てが丸く収まりました。つらい。


そんなこんなで、締切ギリギリまで試行錯誤を繰り返していました。

一部からは「さわやかで圧が足りない」「筋肉の解釈違い」等の評も有りますが、手をかけただけあって私はなかなか気に入っています。

これは編集に限った事ではないですが、要素が多くなって複雑になればなるほど作品を纏めるのって難しくなりますよね。私が扱うシュビ音源は構成がシンプルでない事が多い代わりに、音声加工上で情報を簡潔にする工夫をしていたりします。 この辺りの事はまた機会があったらお話しようと思います。

それではまた。