ザ☆シュビドゥヴァーズの日記

毎日更新されたりされなかったりする日記

Dorico Pro 3を使ってみた話

imockです。長文書いてたら大遅刻しました。

ご軽率したSurfaceにFinaleを突っ込もうにもライセンス数が足りないので一度動作確認のために体験版を入れようとしたら、Finaleは体験版の配布を中止していて腹が立ったので、前々から気になっていたDoricoの体験版を入れて使ってみました。結論としてはそこそこに自分の用途にはマッチしているので、乗り換えるつもりです。

Doricoの日本語の記事は少ないので、完全私見ですが使ってみた感想などを書いていこうと思います。
なお、筆者の楽譜作成環境はMusescore 1.x(約5年)→Finale 2014(約5年)となっています。SibeliusはFinale導入前に体験版を少し触りましたが、当時は「これならMusescoreでいいや」と思ったので以降全く触れていません。
また、合唱+ピアノ伴奏の編曲を行う前提とします。(オーケストラ編成だとよりDoricoの長所が活きそうですが、器楽は全く分からないのです)


Doricoとは

Steinberg社製の楽譜作成ソフトです。
Steinberg社と言えばCubaseを代表としたオーディオ関係のソフト及びハードで有名です。シュビの録音・編集でもCubaseを使用しています。

Ver1.0が2016年リリースとかなり新しめのソフトであり、次世代の楽譜作成ソフトウェアを謳っています。

Doricoの長所

  1. 自動浄書機能が強力である
    五線と連桁が重ならないよう符尾の長さを自動調整する、1つの音符に対し日本語歌詞を2文字以上入力した場合自動で歌詞の下にスラーを付ける、表拍をまたぐ長さの音符を自動で適切な音価の音符2個に分割しタイで繋いだ状態で記譜する、親切臨時記号を自動で付ける(どのようなときに付けるかルール付け可能)など、かゆいところまで手が届く仕様です。身内で歌う程度の楽譜を作るのであれば手動で浄書する必要はほとんどありませんし、出版する場合でも手間が省けます。

  2. 頻出する記号の入力が楽
    「@」ボタンを押すだけで選択中の音符全てにアクセントが付きます。同様にボタン一つでスタッカート、テヌート、山形アクセント、セミスタッカート(スタッカート+テヌート)などが入力でき、それらを複合させることもできます。Finaleのようにアーティキュレーションツールをいちいち呼び出す必要がない分楽です。
    また、クレッシェンド・ディミヌエンドも「<」「>」ボタンを押せば配置可能かつ、位置調整も始点と終点を音符単位で指定し、終点手前で停止するか終点を追い越すかを選択するだけで済むため楽です。
    スラーはFinaleと手間はあまり変わりませんが、平坦なスラーに対応しているのはDoricoならではです。使うかは分からないですが……。

  3. 充実したプレイバック機能
    さすがCubase開発元というだけあってVST音源は豪華ですし、さらに音符単位でベロシティ調整可能など様々な細かい設定ができ、凝った音取り音源を作成する上でもDoricoで完結できます。サブカル合唱界では音取り音源作成込みの依頼が多いので役に立つでしょう。(Finaleはこの辺りの機能が弱いです)

Doricoの短所

  1. インターフェースが分かりづらい
    設定可能な項目が多数あるのですが、どこから設定すれば良いのか分かりづらいです。中には初期値が一般的な慣習と異なっていることもあり事前の設定変更は必須なのですが、設定項目を見つけるまでに数分かかるということが頻発しました。
    また、コマンドの名称も一部直感的に分かりづらいです(タイの削除が「はさみ」、音符の上下反転が「フリップ」など)。さらに三善アクセントなどデフォルトでは表示されないキャラクタを呼び出すときも、英語のカテゴリ一覧から探す必要があります。この辺は慣れていけばどうにかなるとは思いますが、最初の楽譜作成では間違いなく苦労します。

  2. ショートカットキーありきの操作性である
    選択位置から再生(P)、付点の作成(.)、連符の作成(;)あたりはショートカットキー前提の操作性になっており、マウス操作主体のユーザーが苦労することはもちろん、ショートカットキー一覧からコマンドを発見するまでコマンドの存在に気付けないことがあるなど、キー操作を覚えてなんぼの操作性になっています。
    またFinaleから乗り換える場合、コマンド体系が微妙に異なっているため間違えたキーを押してしまいイライラします。ただ、ほぼ全てのコマンドについて自由にキーマッピングできるようになっているので設定してしまえば問題ありませんし、歌詞のみ選択するなど地味に使う機能に一時的にショートカットキーを振るなどもできるので、こちらも慣れてしまえばどうにでもなります。

  3. 日本語歌詞機能が貧弱
    合唱用途ではこれが一番致命的です。1音に2個以上の文字を入力すると自動(または手動)で下にスラーを付けられるのは優秀なのですが、それ以外は貧弱すぎます。具体的には、

    • 通常の手段では休符やタイで繋がった2個目以降の音符に対し歌詞を入力できない。(前者は音符入力→歌詞入力→音符削除の手順で、後者はタイ削除→歌詞入力→タイ再付与で一応可能だが手間)
    • 組段最後の歌詞が全角文字である場合、次段初めの位置から延長線(____)を引けない。
    • 2個以上の音符にまたがる歌詞スラーは作成不可能(通常スラーから強引に作ることも難しい)
    • 音符と全角文字の相対水平位置が文字によって異なる。このため、歌詞を2行入力すると1段目と2段目で文字の開始位置がずれてしまう。

      英語圏だったり歌詞のない器楽の楽譜であれば問題ないのですが、日本語歌唱に限って凄まじく問題があります。
  4. 融通が効きづらい
    自動浄書機能が強力であるゆえの裏返しですが、アナログに記号を追加するなどの操作性はFinaleの方が良いです。

  5. デフォルトの合唱プレイバック音源が伴奏付きだと使い物にならない
    音質は良いのですがアタックのタイミングが非常に遅いため、ピアノと合わせると大きくずれてしまい使い物になりません。VSTの設定を細かくいじれば直せそうな気もするのですが、DTMの知識がないため格闘してもダメでした。教えてKJ先生。

  6. 日本語のドキュメントがほとんどない
    初版リリースから約3年と歴史が浅いこと、日本ではユーザーが少ないこともあり、公式のヘルプ以外の日本語ドキュメントが非常に少ないです。Googleさんに「もしかして:doriko」と言われる始末。

結論

  • マウス操作主体である→Finale一択
  • PCに弱い→Finale一択
  • 時間はいくらかかってもいいので超凝った浄書したい→FinaleなりLilypondなり、融通が効くソフトを使うべき
  • 多少雑でもいいのである程度はきれいに浄書したい→Doricoを試すのもあり
  • 普段から多種のキーボードショートカットを多用する→Doricoだと快適になるかも

なお、オーケストラなどの大編成の場合、自動浄書機能の強力、パート譜から指揮者用のコンデンススコアの作成機能、歌詞入力の必要がないことからDorico向きだと思います。

以上、長々と書きましたが参考になれば幸いです。